

Vol.2
“スタジオT”
こんな私もプレスになって3年の月日が経とうとしている。思えばこの3年の間にいろんな経験をさせてもらってきた。
雑誌の取材で六本木のマジックバーに連れて行かれたこともあった。私がマジシャンの指示通りにサインしたトランプ(「今までにダイヤのクイーンにサインしたことは?・・・ではこのトランプは世界でひとつしか存在しないですね?」・・・というアレ)が冷蔵庫から取り出された無傷のレモンの中から出てきたと思えば、知らないうちに自分の両肩の上に100円玉が乗っていた・・・。
またはロンドンでのカタログ撮影の際にテロに巻き込まれたこともあった。厳戒態勢の空港で中近東出身者と思われたのか執拗な荷物チェックに遭い、私のかわいいプリントのパンツや、お土産用に購入した大量の「I LOVE London」とプリントされたTシャツをその場で全部出されるなど人前でプライベートをさらされ、クラスメイト全員の前で先生に「お母さん」と呼んでしまった時にも似た恥ずかしさを抱きながら命からがら帰国したこともあった・・・。

そんないろんなことがある中で私には特別なことがある。“スタジオ撮影”である。
スタジオには廃倉庫や廃工場を再利用した正直薄気味悪い雰囲気のものや、古い洋館を一部改築したハウススタジオなどいろんなスタジオがあるが、中でも私の中で特別な存在となっているのは、モデルの背景が灰色だったり黒だったりする写真の撮影に用いられるフォトスタジオと呼ばれるスタジオである。
薄暗い空間でモデルや物を被写体としカメラマンがスタジオマン(そのスタジオに所属しながらカメラマンのアシスタント的なことをする人)に指示を出しながら照明を調節し「バシャッ!ピーピー」とシャッターとストロボの独特な音を立て、スタイリストが服を着せ付け、モデルがポージングをとって、みんなが一つの作品を作るために真剣に各々の仕事に取り組み撮影が進行していく、良い意味でピリピリとした空間。
・・・というのももちろん好きなのだが、そんなピリピリとした空間の中で私は必ず横目でチラチラと見てしまうものがある。
不謹慎なのは重々承知している。しかしどうしても気になってしまうのである。スタジオマンが着ているあのTシャツ。そう「スタジオT」が。
若者たちがカメラマンになることを夢見たり、いろんな目標に向かって汗水垂らして仕事をしている。もしかしたらそんな彼らが着ているから光って見えるのか、はたまたそんな彼らに一種の憧れみたいなものを抱いているのか・・・。
ある時、都内の某スタジオでの撮影の際についに勇気を振り絞って聞いてみようと思った。「そのTシャツは売ってるんですか?」ただそれだけの言葉を発すればいいのである。恐る恐るスタジオマンに近づき喉から搾り出すように言葉を吐いた。
「しょのTシャツ・・・」
噛んだ。完全に噛んだ。しかしここまで言ってしまってはしょうがない。彼のTシャツを指差しながら「売ってるんですか?」と押し通した。すると彼は
「いいっスよ、あげますよ」。
正直驚いた。ちゃんと通じてることにも驚いたが、それよりもあっさりとTシャツ獲得が決定したことに驚いた。

それからというものすっかりコレクターになってしまい、今では5つも集まったし、噛まずにちゃんと話しかけられるようにもなった。断られるケースもやはり少なくはないが、めげずに集めていこうと思う。いつか空港で荷物をひっくり返されたら「スタジオTでいっぱい!」なんてことになる日を夢見ながら・・・。
雑誌の取材で六本木のマジックバーに連れて行かれたこともあった。私がマジシャンの指示通りにサインしたトランプ(「今までにダイヤのクイーンにサインしたことは?・・・ではこのトランプは世界でひとつしか存在しないですね?」・・・というアレ)が冷蔵庫から取り出された無傷のレモンの中から出てきたと思えば、知らないうちに自分の両肩の上に100円玉が乗っていた・・・。
またはロンドンでのカタログ撮影の際にテロに巻き込まれたこともあった。厳戒態勢の空港で中近東出身者と思われたのか執拗な荷物チェックに遭い、私のかわいいプリントのパンツや、お土産用に購入した大量の「I LOVE London」とプリントされたTシャツをその場で全部出されるなど人前でプライベートをさらされ、クラスメイト全員の前で先生に「お母さん」と呼んでしまった時にも似た恥ずかしさを抱きながら命からがら帰国したこともあった・・・。

そんないろんなことがある中で私には特別なことがある。“スタジオ撮影”である。
スタジオには廃倉庫や廃工場を再利用した正直薄気味悪い雰囲気のものや、古い洋館を一部改築したハウススタジオなどいろんなスタジオがあるが、中でも私の中で特別な存在となっているのは、モデルの背景が灰色だったり黒だったりする写真の撮影に用いられるフォトスタジオと呼ばれるスタジオである。
薄暗い空間でモデルや物を被写体としカメラマンがスタジオマン(そのスタジオに所属しながらカメラマンのアシスタント的なことをする人)に指示を出しながら照明を調節し「バシャッ!ピーピー」とシャッターとストロボの独特な音を立て、スタイリストが服を着せ付け、モデルがポージングをとって、みんなが一つの作品を作るために真剣に各々の仕事に取り組み撮影が進行していく、良い意味でピリピリとした空間。
・・・というのももちろん好きなのだが、そんなピリピリとした空間の中で私は必ず横目でチラチラと見てしまうものがある。
不謹慎なのは重々承知している。しかしどうしても気になってしまうのである。スタジオマンが着ているあのTシャツ。そう「スタジオT」が。
若者たちがカメラマンになることを夢見たり、いろんな目標に向かって汗水垂らして仕事をしている。もしかしたらそんな彼らが着ているから光って見えるのか、はたまたそんな彼らに一種の憧れみたいなものを抱いているのか・・・。
ある時、都内の某スタジオでの撮影の際についに勇気を振り絞って聞いてみようと思った。「そのTシャツは売ってるんですか?」ただそれだけの言葉を発すればいいのである。恐る恐るスタジオマンに近づき喉から搾り出すように言葉を吐いた。
「しょのTシャツ・・・」
噛んだ。完全に噛んだ。しかしここまで言ってしまってはしょうがない。彼のTシャツを指差しながら「売ってるんですか?」と押し通した。すると彼は
「いいっスよ、あげますよ」。
正直驚いた。ちゃんと通じてることにも驚いたが、それよりもあっさりとTシャツ獲得が決定したことに驚いた。

それからというものすっかりコレクターになってしまい、今では5つも集まったし、噛まずにちゃんと話しかけられるようにもなった。断られるケースもやはり少なくはないが、めげずに集めていこうと思う。いつか空港で荷物をひっくり返されたら「スタジオTでいっぱい!」なんてことになる日を夢見ながら・・・。

EDIFICE PRESS 中室 太輔
エディフィスプレス。酒とゴルフをこよなく愛す26歳。最近金魚を飼おうか猫を飼おうか本気で迷っており、共存の道はないものかと悩んでいる。